なぜ働きますか?就職活動をする上で、この問いに対して早期に自分なりの答えをもつ必要があると感じます。
もちろん就活だけの話だけではなく、それ以上に、将来のビジネスライフから翻って考えても、「なぜ働くのか」ということに対して、自分なりの意味を持った論理的帰結をしておく必要があると思います。
ヤン・カールソンは、著書「真実の瞬間」の締めでこのような寓話を使っています。
ある日、一人の旅行者がバルセロナのサグラダ・ファミリアを訪れました。辺りを歩いていると、道端で一人の石工が石を削っています。好奇心旺盛な旅行者は、その石工に声をかけました。
「あなたは、いったい何をしているんですか?」
するとその石工は、迷惑そうな顔をしながら腹立たしげにこう言いました。
「見て分からないのか。このいまいましい石を削っているんだ!邪魔だから、とっとと向こうに行ってくれ。」
旅行者は慌ててその場を離れ、しばらく歩いていると、別の石工が同じように石を削っています。その旅行者は、懲りずに先ほどと同じ質問をしてみた。するとその石工は、晴れやかな顔をして誇らしげにこう答えました。
「よくぞ聞いてくれました。私は今、世界で一番美しい大聖堂の基礎を作っているんですよ!」
この文章を分解してみましょう。私は以下の3つに分けてみました
1.自らの選択によりどう働くかを選択できるということ
2.その選択に対して自らの解釈及び意味付けを行うことができるということ
3.自らの解釈及び意味付けにより、充足も絶望もできるということまず、人は良い仕事をすることもできるし、適当に仕事をすることもできます。大聖堂の基礎を適当に作る人も中にはいるでしょうし、エクセレントな仕事をする人もいます。これはその人の選択次第です。そもそも働くのか働かないのかも自らの選択によって決めることができます。
次に、その仕事をする上で、仕事にたいしての自らの解釈や意味付けをすることができます(1と2は逆になる場合もあるかもしれません)。例えば、「自分の人生は全く意味がない。よってこの暇な時間をなんとか埋めないといけない。だから、石を削るために手を動かしているんだ」という人もいるかもしれませんし、「自分の人生は意味のあるものである。この大聖堂が出来上がれば、多くの人達の感動や幸せを見ることができる。その大聖堂は基礎がなければ、成り立たない。今、私はその大聖堂の基礎を作っている」という人もいるかもしれません。
自らの解釈と意味付けによって、「なんのためにやっているんだ」と虚無感に苛まれることもできますし、「偉大な仕事をした」と充足することも可能であるという事です。
さらに、仮説ではありますが、完成した暁の全容を思い描くことが出来てしかもその建設工事の一翼を担っている石工は、ただ目前の岩を見つめてうんざりしている石工より、はるかに生産的だと思います。要するに成果にも直結することであると思います。
充実したビジネスライフを送る上で、働くことを選択したのであれば、解釈や意味付けに対して論理的帰結をしておくことは非常に重要だと思います。
それでは、上記を踏まえた上で、私が考える「働くこと」や「仕事」について書いていきましょう。
仕事の報酬とは何ですか?まず仕事の報酬に関して触れます。
「仕事の報酬とは何でしょうか?」
この質問は就活をする上では、あまり意識される方は少ないかと思うのですが、実際働く上で必ず考えるべきことになります。採用担当者をしていて、この事について考えている学生の方はあまり多くないようなので、是非考えてみて欲しいと感じています。なぜならば、ビジネスパーソンがこれから歩むであろう道が、この答えによって分かれると言っても過言ではないからです。
例えば
「仕事の報酬は、給料や収入だ。」と答える方もいると思います。確かにその通りですし、良いと思うのですが、本当にそれだけでしょうか?
最近、私は多くの経営者やその道を極められた方の書籍を読みます。
彼らが「なぜその道を進んでいるのか?報酬は何なのか?」と聞かれた際に、彼らの口から不思議なくらい「給料や収入だ。」とは出てこないのです。これはあくまで私が知っている範囲なので、確立論の話です。
例えばイチローが給料や収入のために、野球をしているなどという記事を読んだことはありません。唯一読んだことがあるのが、報酬を超える仕事をするのは、プロとして最低限しなければならないことだといったことぐらいでしょうか。その他にも、スティーブ・ジョブスの書籍にも給料のために仕事をするといった表現はなかったですし、ドラッカー、アインシュタイン、リンカーン、ダーウィン、エジソン、メイシーもしかりです。
「別にこのような偉人になるつもりはない」と思われるかもしれません。しかし、その道を極めた人物として働き方でも学ぶ部分はあるはずです。
次に、仕事の報酬が給料や仕事以外にあるのであれば、それは何なのかということです。
それは、目に見えない報酬であり、以下の三つに集約されるのではないかと思います。ここからは田坂広志氏の言葉も踏まえていきます。
「能力」
「仕事」
「成長」
「能力」とは、当然仕事をする上でよい仕事を残そうということで、能力が磨かれるでしょう。
「仕事」とは、能力を磨くことで、世の中に対して優れた「仕事」を残すことができるでしょう。
「成長」とは、仕事での困難を仲間と一緒に解決することで、一人の人間として「成長」していくことができるでしょう。
こういった見えない報酬まで見れていると、より良いのではないでしょうか。
世の中には
「目的の報酬」と
「結果の報酬」があると思います。ここで重要なことは、
「目的の報酬」と「結果の報酬」を履き違えないようにしなければならないということです。
収入や給料や地位や名誉というのは、優れた仕事をした結果としてついてくる報酬です。
逆に今挙げた3つの報酬というのは、仕事をする目的としての報酬です。
もし、「目的の報酬」というものを得るために仕事ができたのであれば、「仕事」の本当の喜びというのを感じられると思います。そしてその喜びというのが、人生を充実させる大きな要素ではないかと思います。
得ることだけが仕事なのか?とはいえ、お伝えした「能力」「仕事」「成長」を得ることが仕事の報酬なのかというと、それだけでもないと感じます。
なぜならば、この一文にその意味が集約されています。
『掃除道』鍵山 秀三郎
一つ目の幸せは、してもらう幸せです。
二つ目の幸せは、自分でできるようになった幸せです。
三つ目の幸せは、人にしてあげる幸せです。
人がしてほしいことをしてあげれば喜ばれます。そんな人は頼りにされます。人にものを差し上げる、自分の身体と時間を使って何かをして差し上げる、相手の喜びをわが喜びとする。この幸せを大事にしていただきたいのです。
「してあげる幸せ」は三つの幸せの中でも最高の幸せです。
確かに自分でできるようになる、要するに「能力」「仕事」「成長」を報酬として得ることも充実した人生かもしれません。しかし、それ以上に「能力」「仕事」「成長」を誰かのため差し上げる。こういった世界があるということではないでしょうか。
誠意を役立てるため株式会社ワコールホールディングス代表取締役の
塚本能交さんは、以下のような言葉を残されています。
人はなぜ仕事をするのかと言えば、
報酬をえるためだけではなく、
自分の誠意を役立てるため。
私は本気でそう思っています。
それをきれいごとだと笑うようなら、
あなたはまだ、あなたの仕事に出会っていない。
本当ですよ。
組織で働くということ特に、ビジネスをする上で重要なことは、
「他者へ貢献」が「自己実現」に繋がることだと思います。似てはいますが、「自己実現」が「他者への貢献」へ繋がるとは違います。
特に組織というチームで働くのであればなおさらです。
よく起業家志望の学生さんともお話します。起業家志望が悪いとは思いませんが、割合そういった方に「自己実現」が「他社への貢献」に繋がると考えている傾向が高いようです。
もし、起業家を目指されるのであれば経営者というチームのリーダーとして、「他者への貢献」が「自己実現」に繋がるというのを理解していて欲しいなと感じます。
組織やチームにおいて他者に貢献できない人は、周りから協力を得ることができなくなります。もし自分が周りからの協力を得る必要がないと考えているのであれば、まさにチームである必要がありません。
はっきり言ってしまうと、であるならばチームでなく一人でした方がよっぽど良いということです。
なぜなら組織・チームというのは、自分の苦手なら分野を得意な人がやってくれることで、自分の得意な分野に対して最大限のパフォーマンスを出し貢献する場所だからです。そのバランスがうまく成り立つ時に偉大な成果が生まれるでしょう。
偉大なことをするために、単純に周りの協力が必要だという考え方もありますが、他者への貢献を理解できない人に周りが付いていくはずがありません。有能な経営者はこの考え方を理解していると多くの経営本でも書かれています。
『就活の王道』を編集するにあたって個人的な話ですが、過去に
『就活の王道』という書籍を内定者で出版しました。
例えば、「凄い本を自分たちで本を作った」「本を作ったという伯が付いた」「自分たちは成長した」といって自己満足していても、ビジネスには一切なりません。この本を多くの人たちが読みたいと思ってくれて、初めてビジネスになるということを内定者プロジェクトを通じて知りました。これは非常に貴重な経験だったと思います。
よって自分たちの自己実現の前に、読んでいただく方への貢献が無ければ、到底ビジネスにはならないということです。
上記からも分かるように、採用レベルの高い企業では「なぜ働くのか?」「なぜ仕事をするのか?」を必ず聞いてきます。そこで多くの企業が成長意欲が高い人を欲しがるのは確かです。
ただし、その成長意欲のベクトルが自分に向いているのか、それとも他者に向いているのかが、我々採用担当者にとって非常に重要なことなのです。最後に今回「なぜ働くのか?」ということに関して書いてきました。
もう一度まとめると、「なぜ仕事をするのか」ということに関して、明確な人と不明確な人ではパフォーマンスに大きな差が生まれるなと感じます。もし、今自分が持っている能力をいかんなく発揮しながら仕事がしたいと考えるのなら、「なぜ仕事をするのか」についてしっかり考える必要があります。
そして、就活する上でも「なぜ働くのか?」について考えるべき理由があります。
なぜならば誠意を役立てることを前提に、
誠意を役立てられるような、誠意を役立てたいと思える会社を選ぶ視点も必要だということです。「給料」「収入」は使い果たせばなくなってしまいます。
「能力」は技術革新や環境の変化によって価値が失われるかもしれません。
「仕事」はいつの日か物理的なことから存続が難しくなる。または、人々の心から失われてしまう可能性があります。
「成長」は生涯を全うした時に、失ってしまうのかもしれません。
しかし、
「誠意を役立てるという人間性」というのは、人が存続し続ける限り、人から人へと存続していくものではないでしょうか。また、そうあって欲しいなと思います。
※なぜ成長したい人ほど成長できないのか -成長のジレンマ-