リクルートに関しての記事。後でコメントを付けていこうと思います。取り急ぎ引用しておきます。
未公開株譲渡事件、ダイエー傘下入り、そして――。今春、創業から50年の節目を迎えたリクルートが3度目の正念場を迎えている。業績が急速に悪化、この1年で6000人が退社するという異常事態に直面する。リクルートに何が起こっているのか。
従業員の4分の1が退社
「利益を確保するために人を切る。“普通の会社”になったリクルートに未練はなかった」。リクルートのグループ会社を昨年退職したOBはこう打ち明けた。
「卒業」。リクルート社内では新天地での活躍を願う気持ちを込めて、社員が会社を辞めることをこう呼ぶ。だが、2009年春に始まった人員削減は「卒業なんて耳障りのいい言葉で表現できるものではなかった」という。
まず、本体やグループ会社で働く契約社員の期間満了に伴う契約更新をやめ、補充を一斉に中止。リクルートスタッフィングやリクルートエージェントなどのグループ会社では、過去に例のない早期退職も実施した。昨年4月に2万5000人いたグループの従業員数は、今年4月には1万9000人にまで減少。企画力や営業力に定評のあるリクルートの退職者は他社から引く手あまたで、人材輩出企業と呼ばれたが、「これではもはや人材排出企業。人材こそが財産の会社だったはずなのに」と別のOBも古巣の変貌(へんぼう)ぶりを嘆く。
わずか1年で全従業員の4分の1にあたる6000人を減らすという、大規模なリストラに走ったのには、もちろん理由がある。
「景気の厳しさを感じている。中でも人材(市場)は厳しい」
5月13日、東京商工会議所で10年3月期連結決算を発表した社長の柏木斉は、硬い表情を1度も崩すことなく、こう語った。売上高に相当する営業収益は前の期に比べて26.8%減の7933億円。非上場ながら連結業績の開示を始めた07年3月期以降で初の減収は大幅なものだった。リストラ効果で人件費を2割削減するなどして715億円の営業利益を確保したが、それでも前期比では36.8%もの減益に終わった。
柏木が説明するように、業績悪化の要因の1つは、売上高の5割を占める人材派遣事業の不振だ。大学新聞向けに企業の求人広告を集める代理店業が祖業のリクルートが派遣ビジネスに参入したのは1987年。業界5位の座に甘んじていたが、07年末に「オー人事、オー人事」のテレビCMで知られた業界最大手のスタッフサービス・ホールディングスを約1700億円で買収し、一躍首位に立つ。
裏目に出た買収策
04年に社長兼最高経営責任者(CEO)に就任した柏木は、バブル期の不動産開発とノンバンク事業の失敗で抱え込んだ1兆4000億円の有利子負債一掃にメドをつけると、07年に「今後5年間で2000億円を投資する」と宣言。「10年度に連結売上高1兆円」という中期目標を掲げ、“買い物”を精力的に物色し始める。3000億円を超える売り上げ規模を持ち、6000億円規模だった連結売上高を一気に拡大できるスタッフサービスの身売り話は、柏木ら現経営陣の目に「目標達成への近道」と映った。
柏木は08年3月期決算で、売上高1兆円という目標の前倒しでの達成を報告。その年の1月に本社機能を移転した東京駅前の真新しい高層ビル「グラントウキョウサウスタワー」の周囲では、肩で風を切って歩くリクルート社員の姿が目に付いた。
だが、経営陣の得意満面な表情も08年秋を境に暗転する。リーマン・ショックをきっかけにした景気低迷で、製造業を中心に「派遣切り」が続出。派遣労働の規制強化の動きをにらみ、企業が派遣から直接雇用に切り替える動きも相次いだ。10年3月期は派遣事業だけで前の期に比べ1659億円もの減収となった。
「派遣業界でのキャリアは浅いが、日々活躍している派遣スタッフのための仕組み作りに取り組みたい」。5月25日、業界団体の日本人材派遣協会(東京・千代田)の新しい理事長に就任したリクルートスタッフィングの長嶋由紀子社長は総会でこうあいさつした。
民主党政権は労働者派遣法改正案の今国会での成立を目指しており、実現すれば、市場のさらなる縮小は必至。リクルートスタッフィングやスタッフサービスなど複数の派遣子会社を抱えるリクルートのリーダーシップに対する業界の期待が膨らむが、リクルート社内や外部の株主企業からは、「派遣事業強化という戦略の失敗はあきらか。業界団体の長を引き受けている余裕はないのでは」と冷ややかな声が漏れてくる。
薄れるリクルートらしさ
人材派遣以外の事業部門も軒並み業績を悪化させている。深刻なのは、かつてベンチャーの旗手として急成長してきた際の「リクルートらしさ」が機能しなくなってきたことだ。「らしさ」の1つは企画・提案力にあったが、もはや、世の中を変えるような新しいサービスを次々に生み出したかつての姿はない。
「提案が年々、小粒になっている」。リクルート幹部の一人はため息をつく。83年から毎年開催している新規事業提案制度「RING(リング)」。社員の自由応募による新規事業のアイデアを審査し、受賞した提案は実際に事業化する。結婚情報誌「ゼクシィ」や無料クーポン情報誌「ホットペッパー」、男性向け無料情報誌「R25」などはいずれもリングから生まれた。09年度の提案は344件と、前年の半分以下、グランプリに該当する提案はゼロだった。02年に準グランプリとなったR25以来、目だったヒットがない。
企業風土とも言える強力な営業力もなかなか機能しない。
同社には社員だけがイントラネットで見られるリクルート用語辞典がある。そこに掲載される「ビル倒し」という社内用語はオフィスビルの1階から最上階までを飛び込みで営業することを意味する。営業力を売りにするリクルートらしい用語だ。「固定電話の受話器をテープで手にぐるぐる巻きに固定し、仕事がとれるまで電話をかけ続けたこともある」と語るつわものも珍しくない。
しかし、インターネットの台頭で、人材や店舗、旅行を紹介するサービスが相次ぎ登場。リクルートは価格競争に巻き込まれ、看板の営業力だけでは、広告収入を維持できなくなっている。
リクルートもネットサービスで対抗するが紙の時代の優位性を十分に発揮できないでいる。07年には最新の技術を駆使したネットサービスを企画開発する「メディアテクノロジーラボ」を設立したが、過去の成功モデルを金科玉条とし、変化を嫌う既存事業部門との溝は深く、その役割は限定的なものにとどまっている。SNS(交流サイト)やミニブログなど、ネット界の話題を独占する「ソーシャルメディア」やモバイル分野では、リクルートの存在感は極めて薄いのが実情だ。
過去最大の正念場に
4月1日、通称「G8」と呼ばれる東京・銀座の旧本社ビルの壁面に50周年を記念して、大きな「年表」が掲げられた。「とらばーゆする」「ガテン系」 ――。創業時からリクルートが生み出してきた数々の情報誌やサービスの名称、その時々の流行語が描かれ、通行人の目を引く。62年に創刊した「企業への招待」は、学生が「就職先を自分で選べる時代」を切り開いた。不動産業界ではいまや常識となっている「80メートル=徒歩1分」というルールを作ったのもリクルートの「住宅情報」だ。リクルートが介在することで、人々の生活に役立つ様々な情報が整理され、「情報の受け手となる利用者は選択肢が大きく広がり、送り手の企業はビジネスチャンスが拡大した」と評する声は多い。
だが、「企業規模が大きくなるにつれ、自由闊達(かったつ)な雰囲気は薄れ、管理部門が幅をきかす大企業病が目立つようになってきた」とベテラン社員は指摘する。リクルートの門をたたく人材も、型破りな天才肌より、そつなく仕事をこなす秀才が増加。「自分でモノを考えるよりは、指示待ちタイプの人間が増えた」と、ある情報誌の編集責任者はあきらめ顔でこう話す。
「自ら機会を創(つく)り出し、機会によって自らを変えよ」。創業者の江副浩正の言葉は、リクルートのDNAとして今も語り継がれている。リクルート事件に揺れた88年も、江副が保有株式を譲渡して実質的にダイエー傘下に入った92年も、リクルートは江副が説く「自転」を止めず、時代をリードする新たな情報誌やサービスを生み出し、広く普及させてきた。
業容拡大を外部企業の取り込みで達成する買収策は裏目に出た。では、リクルートらしさで成長する「自転」の勢いを再び取り戻せるか。リクルートは創業 50年目にして最大の正念場を迎えている。=敬称略
(産業部 小川義也)


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